01
帝国の騎空艇。
その一室には帝国最高顧問たる、黒騎士の姿があった。
先ほど賊の艇と戦闘になったため、帝国兵から状況報告を受けている。

02
それで、着弾は船首のみであり…… 
全体の被害は極めて軽微であります!

ふん、そうか。 ではこのまま航行を続けろ。
はい、それでは失礼します!
…………
03
……なんだ?
申し訳ありません。 もう一点、報告がありまして……
この書類を見て頂けますか?

ああ、わかった。
こちらになります……


帝国兵が足を踏み出した刹那、高速の一閃が黒騎士を襲った。
だが黒騎士もまた、高速の抜刀で凶刃を防いでいた。

04
……さすが七曜の騎士。
下らん。 
賊の艇に紛れていた様だが、剣舞を見せる為に来たのか?

05
貴様の命、頂戴に上がりました。

フッ…… 退路なき空で暗殺とは、愚策だな。
断ったのは、その長剣の切っ先です。
なるほどな。 保身より戦術的優位を選んだ訳か。
……だが、所詮は小細工に過ぎん!

……ッ!
06
で、大道芸は終わりか?

irjas──
なんだと……?
はあぁぁぁッ!
お前は……! この特異な太刀筋……
「ウルジュワン家」の者か?

07
覚えていましたか…… 歴史の闇に葬られた、我が一族を!
で、帝政を牽引した者達に復讐か。
……似ているな、父君はどうしている?

死を選びました。
だが、その無念と技は俺が受け継いだ!
はっ…… その歳で磨き上げたものだ。
はぁ……はぁ……!

08
あの、何かありましたか?
こちらから剣戟のような音が──

…………
さて、どうする? まだ続ける気か?
……また参ります。 いずれ必ず屠りましょう。
09
ああ、来い……
その憎悪がお前を生かすだろう。

くっ……!
ご、ご無事ですか!? 今、侵入者が小型騎空艇で逃走を!

捨て置け。 この気流では生き残れまい。
しかし……!
10
…………


黒騎士襲撃事件の翌日。
とある帝国領内の島に、冷凍マグロとルリアの姿があった。
一行は物資補充のため、目立たぬよう買い物していたのだが……

11
え、ええと……
これで日用品は揃いましたね。
私達は艇に戻ってましょうか?
なんだか今朝から、急に帝国兵が増えた気がしますし……

12
……失礼。 薬屋はどこか、ご存知ありませんか?
あ、そこの角にありましたよ。
顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?

……ありがとうございます、では。
…………?
13
おい、そこの小娘!
きゃっ!? わ、私ですか……?
そうだ。 黒騎士様を狙った賊を探していたが……
ふぅむ、似てるな。
年齢といい容姿といい、手配書の少女じゃないのか?

14
うぅ……! ち、違います、その……
……っ! 俺のせいで警備が強化されたのか……
…………

むっ? そこの貴様、何か落とし……
な、なんだ、その血のついた短剣は!?

15
……今です、逃げて。
えっ? あのひと、今、私達に何か……
>「逃げて」と言った
……っ! やっぱり、わざと短剣を……
16
おい、その短剣の血はなんだ?
昨日の夜、どこで何をしていた!?

え、えっと、そのぅ……
(あと5歩、喉笛か頸椎か。)
ご、誤解だよ。 これはさっき拾った物で……
(騒がれる前に一瞬で屠る!)

17
あ、あのっ! わ、私、手配書の女の子です!
なっ……?
えっ……?
あはははは……
その、だから、え~っと……

18
このっ、馬鹿にしてるのか!?
総員戦闘態勢、お尋ね者が現れたぞぉ!

ふあ!? ご、ごめんなさい、冷凍マグロ!
フッフッフ! こいつぁお手柄だぜぇ!
────……
えっ? い、今、何が……? あっという間に……
体が鈍い…… 不時着で肋骨も折れていたか……
19
だが…… おふたりとも、俺が先陣を切ります!
ここを突破しましょう!


帝国兵を振り切って港に着き、グランサイファーを発進させた一行。
なりゆきで乗り込んだジャミルだが、あらためて一行に自己紹介をしていた。

20
ありがとう、ジャミル君。
ルリア達が世話になったな。

いえ、こちらこそ。 俺も島を出る手段に困っていたので。
でも、そうだったんですか……
ジャミルさんも帝国と戦ってて……

……はい。 家族の仇のようなものです。
21
それなら…… このまま私達と一緒に行きませんか?
お互い帝国に追われてますし!

えっ? いいんですか?
それは助かりますが……

大丈夫です!
さっき冷凍マグロとも、そういう話をしてたんですよ!

22
あ、ありがとうございます。
それでは、お言葉に甘えさせて下さい。

ふむ……
(誠実な少年に見えるが……)
(しかし彼の剣術は、まるで闇に生きる者の「暗殺術」……
 いいのだろうか、彼を仲間にして……)

23
……えっ? わ、私と冷凍マグロが主君?
俺の一族に伝わる技は本来、主君を守るために編み出されたもの。
旅に同行させてもらうにあたり、ぜひ貴方達の影として在りたいのです。
……いかがでしょうか?

あはははは…… そ、そんなこと言われても……
>お手
24
わん。
ダメですよ! 何させてるんですか、冷凍マグロ!
ふふっ…… いや、大人の悪い癖だな。 信じよう、彼を。
あと、毒見役も出来ます。 体に免疫を作ってありますので。
え……えええぇ!? そ、そんなことしちゃダメですよ!

こうして一行の旅に加わったジャミル。
冷凍マグロとルリアを主君と慕い、初めて出来た「仲間」に心を弾ませる。
その特異な剣術は、どこか暗い闇を感じさせるが……
彼の瞳は穏やかな光を湛えていた。

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