01
…………

甲板にまで届く、幼い団員達の賑やかな笑い声。
その日、ルシウスはひとり騎空艇の甲板から艇の外の様子を傍観していた。

02
フッ……この俺が、子供にものを教える、か……
大層な目標を掲げたものだな……


03
では、お次はビィ君の番ですよ! さぁどうぞ!
あぁ、今日こそはやってやるぜ!
ふふっ、その意気ですよ、ビィ君!
いつか必ず、立派な魔法使いになれますからね!


04
まさか、子供だけでなく、
トカゲにまで魔法を教えられる人間が居るとは……
ふん…… 確かスフラマール、と言ったか……


05
よう! ルシウスじゃねぇか!
そんなところから見てねぇで、お前もこっちに降りてこいよ!

いや、俺は……
おーい! 遠慮なんかすんなって!
ほら、早く来いよ~!

はぁ……

ルシウスは、深くため息をつくと騎空艇を降りた。

06
ふふっ、ルシウスさんこんにちは。
って……なんだか思いつめた顔をしてるわね?
もし、悩み事があるなら先生に話してみてくれないかしら?

いや、俺は悩み事など……
07
ははん……オイラにはわかったぜ!
どうやったら先生になれるか悩んでたんだろ!? アタリか?

なっ!? トカゲ貴様、何故それを……!!
へっへーん! 見てたらわかるぜ!
騎空艇からセンセェの事観察してたみたいだしよ!

08
わぁ! ルシウスさんは先生を目指しているのね!?
とっても素晴らしいわ!!

いや、俺はまだ教師になると決めたわけでは……
どうして? 悩んでばかりでは何も始まらないわよ?
だから、先生に協力できることがあるならなんでも言ってちょうだい!

09
うーん、でもなぁ~ルシウスは目つきが怖いせいか、
子供の団員達が逃げちまうんだよな。
だから、それを気にしてるんだろ?

…………!?
うーん、素敵な志を持っているのにそれはとてももったいないわ!
そうねぇ……

10
ハッ! そうだわ! 先生を知るには一度、
ルシウスさんが生徒になってみたらいいんじゃないかしら?

えっ?
なんだってぇ!?
ルシウスがセンセェの生徒になんのかよ!?

みんなに楽しんでもらうためには、
教える教師こそ楽しむべきですから妙案だと思います!

11
きっとルシウスさんも笑顔が似合う素敵な先生になれるはずだわ!
そうよ! そうしましょうよ!!

おい! ま、待ってくれないか……!?
そうだな! まずは楽しむことから覚えて行けばいいかもだぜ!
ルシウス、頑張れよ!

…………っ!

スフラマールからの厚意を十二分に感じたルシウスは、
断るに断れない状況に困惑する。
だが同時に、前向きになろうと決意した矢先、
それを挫こうとする己を情けなく思い……

12
はぁ……これも人生経験か…… スフラマール……先生。
宜しく頼む……!


頭を垂れ、スフラマールの厚意を有難く受け取るのだった。

13
では、これを使ってね。

スフラマールから手渡されたのは魔法の練習用の華奢な杖。

14
では、先生を真似て杖を振ってみましょう!
なに? この杖を……振るというのか……?
そうね。
初心者のうちは杖を使わないと魔法は扱えないもの。

15
(……まさか俺の人生で、魔法の杖を振る日が来ようとは……)
では! 杖を構えて、魔法の呪文をとなえて~
さんはい!


己の腹の底から湧き上がる羞恥心を懸命に抑え込む。

16
(くそっ…… こうなればやけくそだ!!)
はぁぁぁぁぁ!!!


葛藤を振り切り、全力で杖を振る。 その顔は鬼の形相だった。

17
え? やだ、どうしたの? そんなに力まなくても大丈夫よ?
ふふっ! 杖を振って、風を切る音が聞こえるなんて、先生初めてだわ!

もしや…… これでは習得は無理だろうか?
いいえ、そんなことはないけれど、もっと優しく振るものよ?
あまりにも力みすぎているものだから。

そうか。だが問題ないのであれば気にしないでくれ。
これは俺の戦い……

18
ふっ……己に打ち勝ってこそ道は開かれるはずだからな……!!
なるほど。ルシウス君がそういうなら先生は何も言わないわ。
それじゃあ、頑張りましょうね!

あぁ、スフラマール先生! 宜しく頼む……!

先生になるためにスフラマール先生の生徒を経験するルシウス。
2人のクロスエピソード「おしえて!先生とルシウス君」の続きは自分で確認しよう!