01
まんかい、まんか~い♪ 宴会日和だにゃ~

桃色の花で飾られた木々を眺め、ラムレッダは顔を綻ばし杯を傾ける。
数日前、この地を見つけたラムレッダは宴会をするのに相応しい場所だと考え、
冷凍マグロ一行に話を持ちかけた。
一行は快諾したのだが不運にも急な依頼が入ってしまい、
ラムレッダだけが先にこの地を訪れ、宴会の準備をしていた。

02
にゃはは~♪
きっと冷凍マグロきゅん達
あたしの秘蔵のお酒&ジュースを見たら喜んでくれるにゃ~!
どれもおススメの逸品にゃ~
見てるだけでいいキブン~……
あー早く飲みたいにゃ~……

03
ごくり……ちょっとだけ……
ちょっとだけ飲んでもいいかにゃ?
いや、だ、ダメにゃ。 これはみんなの分!
絶対に手を出しちゃダメにゃ!
でもほんの……ほんのちょっとだけなら……
ううん、ダメにゃ……

04
何を迷うておる。
はにゃっ!? だ、誰にゃ!?
我こそは欲望の権化。
ぬの正直な心よ……

05
にゃ、にゃんだと……?

ふん、自分を偽るでない。
うぬは飲みたくてしかたない。
ならばその欲に身を委ねるのだ。

でも、でも……
06
ククク……見よ!
あの透き通った琥珀色の蒸留酒を!
アウギュステで蒸留されたものだ。

グラスに注げば海を巡る潮風が吹き、うぬを涼しげな浜辺へ誘うに違いない。
は、浜辺……ごくっ……

07
口に含めば胡椒のようなスパイシーさが心地よい雨粒となり、
風情な音色を奏で始め……
飲み込めばさらに表情を変え、
暁の海のように爽やかな甘い余韻がうぬを幸福で満たすだろうな……

08
うぁぁぁ~にゃぁぁぁ~! なんだかよくわからないけど……
のみ、たい、にゃ~~~!

09
ちょっと待って、ダメだよ!
そのお酒はみんなのために用意したんでしょ!?

10
羅無の言うことなんか聞いちゃだめー
なーんもいいことないよー?

11
おぇっ……
うっぷ……

12
お、お前らはラムちゃんズ!?
羅無って誰にゃ!?

目の前のすっごい強そうで大物っぽい子だよっ!
やっぱり、忘れちゃってたのね……

仕方ないよー今までぼくたちががんばってたおかげで
羅無はでてこられなかったんだからー

13
実はねー君が粗相を起こして
修道院を飛び出しちゃったのは羅無のせいなんだー

にゃ、にゃんだってぇ!?
14
ふん、聞き捨てならんな。
我はうぬの抑圧された欲望を
解放してやったに過ぎん。

聞き捨てならないのはこっちのセリフにゃ! 
あたしの人生を台無しにしやがって!

15
もう惑わされない!
あたしはお前なんかに屈しないにゃ!

フフフ……そうかそうか。
だが、レダ美はどうかな? うぬは確か……甘党であったな。

16
ほぉら、見るがいい。
クイーンビーに祝福された伝説の蜂蜜酒だ。

ええ!? ラムレッダ、あんなの隠し持ってたの!?
想像しろ……妖艶に輝く黄金はうぬの舌を優しく抱擁し、
幾度も幾度も愛撫することだろう。

17
あ、ああ…… ああ……
ふにゃあー! レダ美ー!
羅無の言葉に耳を貸しちゃだめだよぉー

そう冷たいことを言うな、ラム子よ。
うぬは度数が強いのを好いていたな?

18
ならばこの清酒は魅力的ではないか?
別名、星殺し。飲んだ星晶獣を皆、酔いつぶしたという噂をもつ名酒よ!
ククク、いったいどれだけの酒豪を深き夢の底へ叩き落としたことか。
我にもコイツの味は想像がつかん。

19
ふにゃーー! 
飲みたいー! あれ飲みたいよー!
夢の底に落ちたいよー!

そんな、み、みんな……
ククク。
さて、次は……

20
おぇっ……うぇぇおっ……
ちょ、ちょっと……今やばいにゃ……
後に……後にしてくれ、にゃ……

…………
21
クク、残るはお前だけだぞ。
ラムレッダ…… 抗うのはやめて素直になれ。

う、ううぅぅぅっ……! にゃぁぁぁ……!
ダメにゃ…… ダメなんにゃ!

ほう? なぜそこまで意固地になる?
22
お前の言うとおり……ここにあるお酒はどれも最高だにゃ……!
飲めばきっと幸福に満たされるにゃ!
でもだからこそ、その幸福をみんなで分かち合いたいんだにゃ!
みんなでおいしく飲みたいんだにゃ!

23
ラムレッダ……! そうだよね!
こんなにおいしいお酒、一人で飲んだらもったいないよね!

24
ふぇー危なかったー……。
危うく幸せを独り占めするとこだったー。
やっぱりお酒はみんなで楽しまないとねー

25
うぉえっ……
26
あたしたちの意思はもう揺らがないにゃ!
諦めるのはお前のほうにゃ!!

ふふふ……
そうか……

27
成長したな……
ラムレッダ……

消えた……?
28
ふふ、勝ったみたいだねー
きっともう出てこないよー!
欲望を倒すなんてすごいなー!

ふ、ふふ……
29
ふふふにゃはははっ!
欲望に勝ったにゃ! ラムちゃんズの大勝利にゃ!
祝杯にゃぁぁぁぁ! 祝杯をあげるにゃぁぁぁぁ!


30
しゅく、はい……
だいしょうりー……
むにゃ、むにゃ……んぐっ……

31
むにゃ? うーん?
知らないうちに寝てた……? って……
お酒が無いにゃ!?
もしかして……知らないうちに全部、全部飲んじゃったにゃ!?

32
おーっす! 
わりぃわりぃ、ずいぶんと待たせちまったな!

ひぃっ!?
33
うん? どうした、ラムレッダ。
顔色が良くないが……

ご…… ごめんなさいにゃぁぁぁぁっ!
うわぁぁぁぁんっ!!

34
一人で全部飲んじゃったにゃぁ!
みんなのお酒~~~~!! うわぁぁぁぁん!!
ごめんにゃ、ごめんにゃあ…… ひぐっ……

>こらー
35
って、ありぇ……?
冷凍マグロきゅん、あんまり怒ってないにゃ?

ふふ、安心してください。 ほら、見てください!
うにゃにゃ! おしゃけー!
いっぱいあるにゃ!

36
へへ、冷凍マグロがラムレッダのためにって、
今回の報酬で買ってきたんだよ。

冷凍マグロきゅん……
ん~~~~!

37
冷凍マグロきゅ~~~~んっ!!

冷凍マグロはラムレッダに思いっきり飛びつかれ、
その勢いで倒れこんでしまう。

38_
おいおい、はしゃぐのはまだ早いぜ!
宴会はこれから……

あ、まずっ……
39
これは、だめ、にゃ……
この、体勢、は……あ、来る……
波が……すごい勢いで……
うっぷっうっ……おえぇ……

きゃぁっ! 冷凍マグロ~~~!

一行はラムレッダを慎重に冷凍マグロから引き剥がし、介抱する。
波打つような吐き気を覚える中、
ラムレッダは優しい仲間達に感謝し、今一度自分を戒めるのだった。

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