01
デリフォードの手紙に書かれた場所を目指す冷凍マグロら。
その艇内で、敵の攻撃によって力を失ったカリオストロはひとり頭を悩ませていた。

02
────……
ふむ……次は金でも混ぜてみるか。

カリオストロが攻撃を受けて以来、ウロボロスの肉体は崩壊を続けていた。
どうにかそれを修復するため、
色々な素材を組み合わせては試行錯誤を重ねるカリオストロ。

03
さて、これでどうだ?
これもダメか……
……となると、やっぱり虫体が傷ついてやがるのか……


溜め息をつき、頭を抱えるカリオストロ。
すると、何者かがドアを叩いた。

04
あん……? お前らか。どうした?
いや、その……
部屋にこもりっきりだけど大丈夫かと思ってよ。

05
はい…… なんだか体調も悪そうですし、心配になって……
まあ、オレ様は平気だ。 だが……

ちらりとウロボロスを見るカリオストロ。
その目には、明らかに焦りの色が浮かんでいた。

06
どうも上手くウロボロスが扱えねえと思ったら、厄介な事になっててな……
ああ、確かになんかウロボロスも調子悪そうだけどどうしちまったんだ?
コイツは虫に似た本体を核にして骨格やら筋肉やらを盛った感じなんだが……
あの時、コイツの本体の方に傷が入ったらしい。
それで修復が上手くいかねえんだ。

07
うーん……なんだかよくわかんねえが、その核って奴は、なんで直せねえんだ?
大昔のオレ様が作ったモンだからな。
あの頃は何もわかってなかったから、今からすりゃ滅茶苦茶な作りをしてる。
スパゲッティみてえに絡んだ構造をきちんと分析するだけの力は、
今のオレ様にはねえ……

08
クソッ……忌々しいぜ!
本調子ならこんなの、すぐに直してやるってのによ!

うわぁ…… オイラ、こんなカリオストロ初めて見たぞ……

椅子を蹴り飛ばすカリオストロを見て驚きを隠せない冷凍マグロら。

09
>……大丈夫?
あん? 大丈夫ってお前、もしかして……
冷凍マグロさん……☆  カリオストロのこと、心配してくれてるの?

10
冷凍マグロさん、やっさしい……☆
カリオストロ、ちょっとだけドキっとしちゃった☆


そう言って、冷凍マグロの腕に絡みつき、見上げてくるカリオストロ。

11
ええっ!? か、カリオストロさん!? そんな、冷凍マグロに……!?
えへへ……冷凍マグロさん、優しいから…… ちょっと甘えてみちゃった☆

どうも何かしらのフリのようであるが、
何をどのように返せばいいかわからず冷凍マグロはしばし考え込む。
カリオストロの視線に応えるように、
そのアゴに優しく手をそえて自分の方へと顔を向かせる。

12
あ…… 冷凍マグロ、さんっ……
ええっ!? 冷凍マグロ、な、な、な、な、何やってるんですか!?
…………
13
え、あ、おい! なんかこれ、ただならぬ気配が漂い始めたぞ!

そして冷凍マグロとカリオストロはしばし、見つめ合い──

14
ふん…… 小僧が調子に乗るんじゃねえ。 冗談だ冗談。

結果、冷凍マグロは鼻を思い切り指で弾かれ、悶絶する羽目になってしまう。

15
さて……気分転換は終わりだ。 オレ様はウロボロスの修復作業に戻る。
ああ。なんだかんだウロボロスは頼りになるし、
傷ついたままってのも可哀想だしよ。頑張ってくれよな。

……そうだな。 コイツに死なれても困る。
16
えっ? 死んじゃうって…… そんなに深刻なんですか?
核の方はデリケートなんだ。 傷から妙なもんに感染すりゃあっという間だからな。
まあ、調子は狂っててもオレ様は天才には違いねえ。 なんとかしてみせるさ。

はい…… でも、無理はしないでくださいね。

冷凍マグロらはカリオストロの部屋を出る。
残されたカリオストロは冷凍マグロらの足音が遠ざかったのを聞き届け、口を開いた。

17
いっそ、イチから作り直しちまえば手っ取り早いか……
――……
……なんてな。お前を見捨てるような事はしねえよ。
天才だの開祖だの、そういったのの名にかけてな。

18
助けてみせるさ。お前は、命の恩人みたいなもんだ……


その顔には、誰にも見せた事の無い切実な表情が浮かんでいた。

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