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ショチトル島。
そこは、島民達の信仰を受ける5人の巫女の
歌と踊りがもたらす奇跡によって繁栄を約束された島。
巫女信仰の起源は覇空戦争まで遡る。
星の民の支配に抵抗した空の民の戦士と
その親友のショロトルという犬の物語。
星の民に捕まって星晶獣にされた事から親友に捨てられ、
泣きながら空を駆け、暴れ回ったというショロトル。
その悲しみを癒したのがショチトル島にいた
5人の女の子達の歌だった。
友に捨てられたショロトルは、ここで新しい友を得て、
以来、島に加護を与える存在となった。
ショロトルを癒した5人の女の子にならい、
今に伝わる巫女が誕生する。
でも、いつしか起源は忘れられ──
それをきっかけに、大きな事件が起きてしまった。
忘れられたショロトルが、再び暴れ出したのだ。
とある騎空団に助けられ、私達5人の巫女は
島の人々と力を合わせ歌でショロトルを鎮める事ができた。
そして脅威は去り、島に平和が戻る。
しかし、島の繁栄が長く続けば
いずれ同じ過ちが繰り返されるだろう。
ショチトル島に住まう者達、
島の神ショロトルを忘れることなかれ。
神を再び悲しませぬために。

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「そのために、私はここに記す」……と。

16歳を迎えて巫女を卒業したディアンサは、
楽師兼祭司見習いとして日々の研鑽に励んでいた。
楽師として楽器の練習に励むかたわら、
ショロトルにまつわる伝説の編纂に追われているのであった。

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ふう、今日はこんな所かな。疲れた……

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遅くまで何やってんの。
あ、リナリア。 今、書いてたんだ、例の本。
島の中で調べた事がまとまったから。
でも……書き始めはしたんだけど、
気になる事が沢山でてきて手が止まっちゃうんだよね。

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たとえばさ、ショロトル様の故郷はどこなんだろうとか、
空の民の戦士とはどんな風に出会ったんだろう、とか。

そっか……ねぇディアンサ。 ちゃんと楽器の練習してんの?
本番で失敗したらあたし嫌だよ?

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ふふ。大丈夫だよ。ほら、見てこれ。
指先の皮、こんなに固くなっちゃった。 弦楽器って弦押さえるの大変。

ほんとだ。 ……頑張ってるんだね。
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あたし、次の公演、楽しみなんだ。
きっと楽師でもディアンサが一番とるって思ってるし。

え、そんな事ない…… だって人前、緊張するし……
でも巫女では一番だったじゃん。
あたし、ディアンサに向けられた声援忘れられないもん。

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あたしが卒業する時にはきっと……
ううん、絶対! ディアンサよりおっきな声援浴びるんだ。

ふふ。リナリアならできるよ。
んふふ。あったりまえじゃん!
ふわぁぁ……あふ…… 眠くなってきちゃった。
じゃあ、また明日ね。

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うん。おやすみ。

人前に出る事こそないものの、
巫女として舞い歌っていた頃の倍は忙しい。だが、充実はしていた。
そんなある日の事。祭司見習いとして巫女選定の儀式を
見学していたディアンサだったが──

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それでは、次の巫女を選ぶ儀式を始めます。
ディアンサ。よく見ておきなさい。

はい、祭司様。

四方に広がる十字洞穴の中央でふたりは風の音に耳を傾ける。
四方から吹く風同士の交わりが唸り声となり、次の巫女の名を告げるという。

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(聞こえる……風の音。何だか不思議。本当に人の声みたいに聞こえる。
 ショロトル様の力なんだろうな……)
(なんて言ってるんだろ…… デ……ィ……アァ……ン……サ……)

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……え、ディアンサ? 祭司様、次の巫女って…… 私と同じ名前の子ですか?
……おかしいですね。資料によれば、
今年14歳になる子の中にディアンサという子はいないはず……


ふたりはうつむき、一瞬考え込む。

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あの、もしかして……
まさかとは思うんですけど、私に巫女を続けろって事ですか?

いえ、そんなはずは……

俺にはデ……ュ……ラァ……ハ……ン……サ……って聞こえたな。(難聴)
ディアンサのフェイトエピソード「祭司見習い、島を発つ」の続きは(ry

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